【ニュースネタ】2022/11/07 日経新聞朝刊:整理解雇、下がるハードル 裁判所、「4要件」を柔軟運用 企業の回避努力カギ

2022年11月7日のテーマ整理解雇の4要件 ニュースより

今朝の日経新聞で、整理解雇の4要件に関する記事がありました。今回はこの記事に関連して解雇の4要件について見ていくことにします。

2022年11月7日の日経新聞朝刊より、解雇の4要件の柔軟運用。

今日の日経新聞の朝刊の記事で、9月30日にユナイテッド航空グループで働いていた元CAが原告となって整理解雇の無効を求めた裁判で最高裁判所が原告の上告を棄却し解雇を認めた東京高裁判決が確定したことに関連して、昭和50年(1975年)の大村野上事件で示された解雇の4要件についての裁判所の判断が柔軟になってきていることが掲載されています。

企業による従業員の整理解雇について、裁判所が認めるハードルが下がる兆しが出ている。今年に入り最高裁の決定など、経営判断による解雇を容認する司法判断が続いた。半世紀近く定着していた「整理解雇の4要件」が柔軟に運用され、人員減の必要性解雇回避の努力などを総合的に評価する傾向が出ている。「労働者に不利」との声もあるが、当面は各社の事情で司法判断が割れる状況が続きそうだ。
・・・(略)・・・

日本経済新聞HPより https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC250F60V21C22A0000000/

1975年の大村野上事件での『(1)人員削減の必要性(2)解雇回避への努力(3)解雇者選定の合理性(4)解雇までの協議の妥当性』の4要件について、当初は『特に人員削減の必要性について、企業が破綻に直面するような状況でなければ認めない傾向があった。』が、『2000年以降、雇用管理の実態が日本企業と異なる外資系企業の裁判を中心に、人員削減の必要性と解雇回避努力について柔軟に解釈し、経営判断による人員削減でも場合により解雇有効とする判決が出始めた。』という記事。

解雇については、その妥当性を争われた裁判が多くあり、この大村野上事件は解雇について高いハードルを課した判例となっていますが、その後、この判例よりハードルが下がる判例が出てきてきている歴史があります。

解雇の4要件のひとつめ「人員削減の必要性」の変遷

大村野上事件(1975年)

長崎地方裁判所大村支部 昭和50年(モ)41号 判決では、整理解雇が権利濫用となるか否かは主として次の観点から考察してこれを判断すべきとしました。判決はこちら

  1. 当該解雇を行わなければ企業の維持存続が危殆に瀕する程度にさし迫った必要性がある
  2. 従業員の配置転換や一時帰休制或は希望退職者の募集等労働者によって解雇よりもより苦痛の少い方策によって余剰労働力を吸収する努力がなされた
  3. 労働組合ないし労働者(代表)に対し事態を説明して了解を求め、人員整理の時期、規模、方法等について労働者側の納得が得られるよう努力した
  4. 整理基準およびそれに基づく人選の仕方が客観的・合理的なものである
  5. (解雇が労働関係法規ないし労働協約、就業規則等に抵触するものであってはならない)

この事件では、上記の1~4のいずれにも該当しないとして解雇無効としました。

この判決は整理解雇について高いハードルを課した判例となっています。特に1の人員削減の必要性について「企業の維持存続が危殆に瀕する程度にさし迫った必要性」つまり、企業の存続が非常に危険な状態になる程度と、非常に高いハードルとなっています。

東洋酸素事件(1979年)

東京高等裁判所 昭和51年(ネ)1028 は整理解雇が認められた裁判です。判決の概要等はこちら

この裁判では、就業規則にいう「やむを得ない事業の都合によるとき」を理由として解雇について、以下の3つの要件を充足することを要し、特段の事情のない限り、それをもって足りるものと解するのが相当としました。

  • (1)同事業部門を閉鎖することが企業の合理的運営上やむを得ない必要に基づくものと認められる場合である
  • (2)同事業部門に勤務する従業員を同一又は遠隔でない他の事業場における他の事業部門の同一又は類似職種に充当する余地がない場合、あるいは同配置転換を行ってもなお全企業的にみて剰員の発生が避けられない場合であって、解雇が特定事業部門の閉鎖を理由に使用者の恣意によってなされるものでない
  • (3)具体的な解雇対象者の選定が客観的、合理的な基準に基づくものである

そして、上記の(1)~(3)について

  • (1)同部門の業績不振はその原因と終始改善は期待できず
  • (2)対象となって職種は他部門でも過員であり、同部門閉鎖によって生ずる余剰人員発生を防止することができたはずとはいえない
  • (3)管理職以外の同部門の全従業員を解雇の対象としたことは一定の客観的基準に基づく選定であり、その基準も合理性を欠くものではない

として、会社の整理解雇を認める判決を下しました。

解雇の必要性について、先の「企業の維持存続が危殆に瀕する程度にさし迫った必要性」とした大村野上事件に対して、「事業部門を閉鎖することが企業の合理的運営上やむ得ない」としして、ハードルを下げた判決となっています。

社会福祉法人大阪暁明館事件(1995年)

大阪地裁平成7年(ヨ)904 では、整理解雇の必要性について大村野上事件の基準を引き合いにだして、判断基準が示されています。判決内容はこちら

整理解雇の必要性について

『単なる生産性向上や利潤追求のためというだけでは足りず、客観的に高度な経営上の必要性の存在を要するが、人員整理をしなければ企業の存続維持が危殆に瀕するという差し迫った状況までは必要でないものというべきである。』

とし、大村野上事件の基準までは必要ではなく、「高度な経営上の必要性」で足りるという基準を示しました。

さらに、要件の認定についても、

単なる人員削減を目的とした典型的な整理解雇とは異なり、人件費の削減と、主として若年労働者の雇用による能率の向上や職場の活性化を併用した、経営改善のための解雇の事案」であるが、
事業の活性化を図り、より収益性を上げるために、整理解雇と併せて、有能な人材を高給で採用し、あるいは、部門により人員を充実させる必要のあることもあり得るのであって、このような事実があるからといって、直ちに、人員整理の必要性がなかったとまでいうことはできない。

とされており、解雇について、かなりハードルが下がってきています。

ナショナル・ウエストミンスター銀行事件(2000年)

平成12年東京地裁決定では、4要件について、以下のように示しています。(判決概要はこちら

事業戦略にかかわる経営判断は、高度に専門的なものであるから、基本的に、企業の意思決定機関における決定を尊重すべきものであり」、「いわゆる整理解雇の四要件は、整理解雇の範疇に属すると考えられる解雇について解雇権の濫用に当たるかどうかを判断する際の考慮要素を類型化したものであって、各々の要件が存在しなければ法律効果が発生しないという意味での法律要件ではなく、解雇権濫用の判断は、本来事案ごとの個別具体的な事情を総合考慮して行うほかないものである。」

としています。そして、「雇用契約を解消することには合理的な理由があり、会社は、債権者(解雇された従業員)の当面の生活維持及び再就職の便宜のために相応の配慮を行い、かつ雇用契約を解消せざるを得ない理由についても債権者に繰り返し説明するなど、誠意をもった対応をしていること等の諸事情を併せ考慮すれば、未だ本件解雇をもって解雇権の濫用であるとはいえない。」としています。

時期としても就職氷河期あたりで、かなり企業のリストラクチャリングなどによる競争力の維持改善に配慮しているように思えます。時はまさしく、カルロスゴーンが日産でV字回復をやってのけた時期です。

手続き面で解雇が否定された事例

あさひ保育園事件(1978年)

福岡地裁小倉支部 昭和51年(ワ)439(判決内容はこちら)では、人員削減の必要性については「人員整理する方針を決めたことは致し方のないものであり、その必要性を否定することはできない」としたうえで、

  • 人員整理のやむなきことにつき説明し、理解と協力を求める努力を一切していないこと
  • 人員整理の方針を決した段階で、何らかの有利な退職条件を付した上で希望退職を募っておれば、この募集に応ずる保母が存在した可能性が充分にある
  • 最終的措置である指名解雇を実施する前に、まずこれよりも労働者にとって苦痛の少い希望退職募集の措置をとることが是非とも必要であった

とし、労使間の信義則に反し、解雇権の濫用にあたるとしました。

そのほか、労働大学(本訴)事件(平成14年東京地裁判決)、山田紡績事件(平成18年名古屋高裁判決)でも解雇権の濫用と去れている判決があります。(いずれも判決概要はこちら

ふかまさ
ふかまさ

以上、今回は、整理解雇の判例について見てみました。

日本の企業が競争力を維持して海外の企業と競争していくうえでは、雇用の流動化、機動的な人員の調整がますます必要になっていくように思います。

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