社労士試験の択一式の労災保険法では、業務災害に該当するかしないかという事例問題もでることがあります。
事例問題はどのような根拠資料から出題されているんでしょうか。過去問以外にどんな事例があるんでしょうか、調べてみました。
過去問での事例問題の出題
まずは、令和4年の択一式の労災法の問4です。個数問題でア~オのすべて正しいが正解です(=すべて業務災害)。
令和4年 社労士試験 択一式 労災法
〔問 4〕 業務災害に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。ア 工場に勤務する労働者が、作業終了後に更衣を済ませ、班長に挨拶して職場を出て、工場の階段を降りる途中に足を踏み外して転落して負傷した場合、業務災害と認められる。
イ 日雇労働者が工事現場での一日の作業を終えて、人員点呼、器具の点検の後、現場責任者から帰所を命じられ、器具の返還と賃金受領のために事業場事務所へと村道を歩き始めた時、交通事故に巻き込まれて負傷した場合、業務災害と認められる。
ウ 海岸道路の開設工事の作業に従事していた労働者が、12 時に監督者から昼食休憩の指示を受け、遠く離れた休憩施設ではなく、いつもどおり、作業場のすぐ近くの崖下の日陰の平らな場所で同僚と昼食をとっていた時に、崖を落下してきた岩石により負傷した場合、業務災害と認められる。
エ 仕事で用いるトラックの整備をしていた労働者が、ガソリンの出が悪いため、トラックの下にもぐり、ガソリンタンクのコックを開いてタンクの掃除を行い、その直後に職場の喫煙所でたばこを吸うため、マッチに点火した瞬間、ガソリンのしみこんだ被服に引火し火傷を負った場合、業務災害と認められる。
オ 鉄道事業者の乗客係の労働者が、T駅発N駅行きの列車に乗車し、折り返しのT駅行きの列車に乗車することとなっており、N駅で帰着点呼を受けた後、指定された宿泊所に赴き、数名の同僚と飲酒・雑談ののち就寝し、起床後、宿泊所に食事の設備がないことから、食事をとるために、同所から道路に通じる石段を降りる途中、足を滑らせて転倒し、負傷した場合、業務災害と認められる。
次に平成29年の択一式の問1です。誤りは、Aの選択肢です。(練習計画以外の自主的な運動は業務外)。
平成29年 社労士試験 択一式 労災法
〔問 1〕 業務災害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。A 企業に所属して、労働契約に基づき労働者として野球を行う者が、企業の代表選手として実業団野球大会に出場するのに備え、事業主が定めた練習計画以外の自主的な運動をしていた際に負傷した場合、業務上として取り扱われる。
B A会社の大型トラックを運転して会社の荷物を運んでいた労働者Bは、Cの運転するD会社のトラックと出会ったが、道路の幅が狭くトラックの擦れ違いが不可能であったため、D会社のトラックはその後方の待避所へ後退するため約20メートルバックしたところで停止し、徐行に相当困難な様子であった。これを見かねたBが、Cに代わって運転台に乗り、後退しようとしたが運転を誤り、道路から断崖を墜落し即死した場合、業務上として取り扱われる。
C 乗組員6名の漁船が、作業を終えて帰港途中に、船内で夕食としてフグ汁が出された。乗組員のうち、船酔いで食べなかった 1名を除く 5名が食後、中毒症状を呈した。海上のため手当てできず、そのまま帰港し、直ちに医師の手当てを受けたが重傷の 1名が死亡した。船中での食事は、会社の給食として慣習的に行われており、フグの給食が慣習になっていた。この場合、業務上として取り扱われる。
D 会社が人員整理のため、指名解雇通知を行い、労働組合はこれを争い、使用者は裁判所に被解雇者の事業場立入禁止の仮処分申請を行い、労働組合は裁判所に協議約款違反による無効確認訴訟を提起し、併せて被解雇者の身分保全の仮処分を申請していたところ、労働組合は裁判所の決定を待たずに被解雇者らを就労させ、作業中に負傷事故が発生した。この場合、業務外として取り扱われる。
E 川の護岸築堤工事現場で土砂の切取り作業をしていた労働者が、土蜂に足を刺され、そのショックで死亡した。蜂の巣は、土砂の切取り面先約30センチメートル程度の土の中にあったことが後でわかり、当日は数匹の蜂が付近を飛び回っており、労働者も使用者もどこかに巣があるのだろうと思っていた。この場合、業務上として取り扱われる。
労災法の事例問題は何がもとになっている?
社労士試験での労災法での事例問題は、試験委員が架空の事例を作っているのではありません。
基発や基収といわれる通達から出題されています。
基発は厚生労働省労働基準局長名で各都道府県の労働局長に向けて発する通達、基収は各都道府県の労働局長からの照会に対する厚生労働省労働基準局長名での解答です。
これらに取り上げられて事例が社労士試験において労働者災害補償保険法(労災法)の試験問題で出題されています。
令和4年、平成29年の過去問のほかこんな事例もあります
社労士試験の勉強は、ひたすら制度の暗記が大半ですが、事例学習や判例学習はそのなかでは比較的興味を掻き立てられるジャンルです。
しかし、試験全体で見ると圧倒的に制度の暗記問題が主体なので、事例問題や判例学習のほうが面白いからといって、ここに時間を割きすぎないように注意が必要です。
令和4年、平成29年の過去問以外ではこんな事例もあります。
業務中に顔見知りの他人に自動車を運転させて生じた事故 ⇒ 業務外
事業主の私用である枝下ろし作業に従事した雑役夫の感電事故 ⇒ 業務上
事業主は事業経営上の都合と家庭に代りがいなかったので雑役夫に地域の枝下ろし作業に出席するよう依頼したものです。
作業時間中に水を飲むために立入禁止区域に入ろうとして事故 ⇒ 業務上
作業場所の給水設備の水がなくなっていたことと、外気温32度、作業場所は35-37度と高温の環境であったようです。
運転手が食事のため停車し、向かいの店で食事するため道路横断中に事故 ⇒ 業務上
帰社が23~24時と遅くなるため、会社が後日精算用の夕食券を支給していました。
無免許の自動車修理工が修理した自動車の試運転で事故 ⇒ 業務上
休日のため運転手不在であり、日直職員を許可を得て試運転していました。
他事業の顔見知りの作業を手伝っていて事故 ⇒ 業務外
発電所長の私宅へ人夫確保の報告に赴く途上の事故 ⇒ 業務上
1日目に欠勤者がいて作業計画に支障があり、人夫確保の報告に赴くことにしたもの。
自動車運転手が積荷で切断した電線を修理し感電 ⇒ 業務上
住民から事前に「(電線を)切ったら継いでいってくれ」と言われていた。
工場の作業員が作業上必要な私物眼鏡を工場の門に取りに行く途中に事故 ⇒ 業務上
妻が届けに来た眼鏡を係員の許可を得て工場の門へ向かったもの。
トラックの車検を受けに行き、車検場のストーブの煙突の取り外し作業を手伝って事故 ⇒ 業務外
休憩時間中に水を汲みに行って事故 ⇒ 業務上
当日は天候等から事前に水の準備はしておらず、休憩時に誰かが「のどが渇いたな」と言ったため水を汲みに行った。
作業開始前に暖をとっていた焚火に石油をかけて引火 ⇒ 業務上
いつものように焚火で暖をとっていたが燃えが悪かったので近くにあった石油をかけた。
突発事故のために鉄道の保線工夫が休日出勤で現場へ向かう途上の事故 ⇒ 業務上
使用者の呼び出しがあり現場にかけつける途上での事故
児童がバットで打った小石が運転中の運送会社の運転手に当たり負傷 ⇒ 業務外
休憩中にキャッチボールをしているときに銃丸に当たって負傷 ⇒ 業務外
工事現場を通過する列車から投げられた氷(7.5kg)が同僚労働者に当たった事故 ⇒ 業務上
炎天下の作業で、同僚といつかそのうち氷を列車から投げて届けてやるという約束をしていた。
かかる危険は当該作業に従事しているものにとって内在しているものだそうです。

事例は昭和30年代以前のものが多く、キャッチボール中に銃丸や、走行中の列車から氷を投げるなど、現在では考えにくい事例もありますが、それもまた興味を駆り立てられてしまう原因でもあります。


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