2022年11月11日の日経新聞の朝刊に、「総合経済対策で決めた出産・子育てへの10万円相当の給付を非課税とする方針を固めた。」という記事が載っていました。
社労士試験では、保険給付等への公課の禁止は定番ですね。「公課の禁止」とセットで、「受給権の保護(譲渡、担保の禁止)」を確認しておきましょう。
まとめとしては原則と例外を押さえておきましょう
・保険給付・失業等給付・給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。
・租税その他の公課は、保険給付・失業等給付・給付として支給を受けた金品(金銭)を標準として課することはできない。
- 労災法:特別支給金
- 雇用保険法:雇用保険二事業の給付
- 健康保険法:なし
- 国民年金法:老齢基礎年金・付加年金・脱退一時金(国税滞納処分による差し押さえのみ)
- 厚生年金法:老齢厚生年金・脱退手当金・脱退一時金(国税滞納処分による差し押さえのみ)
- 労災法:(特別支給金)
- 雇用保険法:雇用保険二事業の給付
- 健康保険法:なし
- 国民年金法:老齢基礎年金・付加年金・(脱退一時金)
- 厚生年金法:老齢厚生年金・脱退手当金・(脱退一時金)
()は禁止はされていないが現状では課税がされないもの
条文も見ておきましょう
労働者災害補償保険法
第十二条の五 保険給付を受ける権利は、労働者の退職によつて変更されることはない。
② 保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。
第十二条の六 租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金品を標準として課することはできない。
労災法では、例外は、「受給権の保護」では特別支給金が例外でした。そして「公課の禁止」では例外がありませんでした。
特別支給金は、「保険給付」ではないため、12条の5の「譲渡、担保等の禁止」の対象となっていません。
「12条の5」も「12条の6」も同じ「保険給付」ですが、特別支給金には公課が課されていません。これは、労災法の建付けとしては公課を禁止していないが、国税庁の取扱いとして、特別支給金には課税がされていないということです。
<例外>
受給権の保護:特別支給金
公課の禁止:(特別支給金)
ただし特別支給金は公課についても禁止されていないが現状は特別支給金には課税されていない。
雇用保険法
(受給権の保護)
第十一条 失業等給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。
(公課の禁止)
第十二条 租税その他の公課は、失業等給付として支給を受けた金銭を標準として課することができない。
雇用保険では、「失業等給付」が受給権の保護、公課の禁止の対象となっています。
したがって、雇用保険二事業の助成金等は、受給権の保護、公課の禁止の例外となります。
<例外>
受給権の保護:雇用保険二事業
公課の禁止:雇用保険二事業
健康保険
(受給権の保護)
第六十一条 保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。
(租税その他の公課の禁止)
第六十二条 租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金品を標準として、課することができない。
健康保険では、「保険給付」が受給権の保護、公課の禁止の対象で、例外はありません。
<例外>なし
国民年金法
(受給権の保護)
第二十四条 給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、老齢基礎年金又は付加年金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は、この限りでない。
(公課の禁止)
第二十五条 租税その他の公課は、給付として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。ただし、老齢基礎年金及び付加年金については、この限りでない。
国民年金法では、「給付」が受給権の保護、公課の禁止の対象となっています。
ただし書きで、「老齢基礎年金又は付加年金」は受給権の保護と公課の禁止の例外とされています。
受給権の保護は「老齢基礎年金又は付加年金を受ける権利」かつ「国税滞納処分により差し押さえる場合」が例外とされています。国税滞納処分による差し押さえ場合だけというのが要注意です。
また、脱退一時金についても、第九条の三の二で受給権保護の例外とされています。(長くなるので、このページの末尾のおまけで、条文を載せています。)
<例外>
受給権の保護:老齢基礎年金、付加年金、脱退一時金
公課の禁止:老齢基礎年金、付加年金、(脱退一時金)
受給権の保護は「国税滞納処分」による場合のみ
脱退一時金は公課の禁止の対象ではないですが、所得税等は課されていません。
厚生年金保険法
(受給権の保護及び公課の禁止)
第四十一条 保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、老齢厚生年金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は、この限りでない。
2 租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。ただし、老齢厚生年金については、この限りでない。ただし書きで、「老齢基礎年金又は付加年金」は受給権の保護と公課の禁止の例外
厚生年金保険法では、「保険給付」が受給権の保護、公課の禁止の対象となっています。
ただし書きで、「老齢厚生年金」は受給権の保護と公課の禁止の例外とされています。
受給権の保護は「老齢厚生年金」かつ「国税滞納処分により差し押さえる場合」が例外とされています。国税滞納処分の時だけというのが要注意です。
<例外>
受給権の保護:老齢厚生年金、脱退手当金、脱退一時金
公課の禁止:老齢厚生年金、脱退手当金、(脱退一時金)
受給権の保護は「国税滞納処分」による場合のみ
脱退一時金は所得税が源泉徴収されますが、原則として申告すれば還付されます。
おまけ
国民年金法での脱退一時金の条文
国民年金法の脱退一時金について、受給権の保護、公課の禁止が条文上どうなっているか見ていきます。(厚生年金法の脱退一時金も同じような建付けになっています。)
■国民年金法の脱退一時金の規定
(日本国籍を有しない者に対する脱退一時金の支給)
第九条の三の二 ・・略・・
7 第十六条、第十九条第一項、第四項及び第五項、第二十三条、第二十四条、第百五条第四項、第百七条第一項並びに第百十一条の規定は、脱退一時金について準用する。この場合において、これらの規定に関し必要な技術的読替えは、政令で定める。■国民年金法の受給権の保護、公課の禁止の規定
(受給権の保護)
第二十四条 給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、老齢基礎年金又は付加年金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は、この限りでない。
(公課の禁止)
第二十五条 租税その他の公課は、給付として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。ただし、老齢基礎年金及び付加年金については、この限りでない。■国民年金法の「給付」の規定
(給付の種類)
第十五条 この法律による給付(以下単に「給付」という。)は、次のとおりとする。
一 老齢基礎年金
二 障害基礎年金
三 遺族基礎年金
四 付加年金、寡婦年金及び死亡一時金■国民年金法施行令
(脱退一時金に関する技術的読替え等)
第十四条の五 法附則第九条の三の二第七項の規定により法の規定を準用する場合には、次の表の上欄に掲げる法の規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとする。
第二十四条 老齢基礎年金又は付加年金 脱退一時金
脱退一時金について、まず公課の禁止から見ていきます。
まず、第15条で「給付」の定義があり、ここには「脱退一時金」は含まれていません。
そして、第9条の3の2第7項の脱退一時金での他の条文の準用の規定では、公課の禁止の第25条は準用されていません。
したがって、脱退一時金は公課禁止の対象となっていません。よって、国民年金法上では、課税は可能ですが、現在は所得税等の規定で脱退一時金は課税の対象となっていません。
次に受給権の保護です。
第15条で脱退一時金は「給付」に含まれていないので、そのままでは第24条の受給権の保護の対象になりません。
しかし、第9条の3の2第7項で脱退一時金について第24条の適用があるとされています。そして、適用にあたっては政令で読み替えが定めれています。そして政令(国民年金法施行令)の第14条の5では準用にあたっては、「老齢基礎年金又は付加年金」を「脱退一時金」と読み替えるとされています。
その結果、第24条は脱退一時金について以下のように適用されます。
「給付を受ける権利(⇒脱退一時金を受ける権利)は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、老齢基礎年金又は付加年金(脱退一時金)を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は、この限りでない。」
結果、脱退一時金は、原則は譲渡、担保、差し押さえは禁止で、例外で「国税滞納処分」による差し押さえのみ可能となります。
(もし第24条が準用されていなければ、脱退一時金は制約なしに、譲渡、担保、差し押さえ可能ですが第24条を準用することで、国税滞納処分の差し押さえ以外は禁止となっています。)
法律ごとの用語の違い
法律によって、用語が違います。試験には影響しないと思いますが、、、。
| 対象の権利 | 公課の対象 | |
| 労災法 | 保険給付 | 金品 |
| 雇用保険法 | 失業等給付 | 金銭 |
| 健康保険法 | 保険給付 | 金品 |
| 国民年金法 | 給付 | 金銭 |
| 厚年法 | 保険給付 | 金銭 |
国民年金保険法は、保険ではなく、国庫負担が大きく目的条文でも「保険」という言葉は使わず「国民の共同連帯」なので、ここでも「保険給付」ではなく、「給付」が使われています。
また、公課禁止の対象として、労災法と健康保険法は「金品」となっており、他は「金銭」となっています。労災法と健康保険法では金銭の支給のほかに治療の現物給付もあるので「金品」となっています。所得税ではタダで物をもらったりサービスを受けたりしたら税金かかることがありますので、そこも課税されないように「金品」となっています。

今回は、受給権の保護と公課の禁止でした。
試験では、例外をさくっと覚えて対応しましょう。


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