2022年の社労士試験の国民年金法で出題された論点である20歳未満、60歳以上の厚生年金保険の被保険者期間の国民年金での取り扱いについて見ていきます。
23歳から65歳までの42年間でも老齢基礎年金は満額もらえない
社労士試験での出題と解答
2022年社労士試験の択一式の国民年金法での問題です。問8のAとDの選択肢が以下の通りですが、いずれも「×」です。
A 20 歳未満の厚生年金保険の被保険者は国民年金の第2号被保険者となるが、当分の間、当該被保険者期間は保険料納付済期間として算入され、老齢基礎年金の額に反映される。
D 大学卒業後、23歳から民間企業に勤務し65歳までの合計42年間、第1号厚生年金被保険者としての被保険者期間を有する者(昭和32 年4 月10日生まれ)が65歳から受給できる老齢基礎年金の額は満額となる。なお、当該被保険者は、上記以外の被保険者期間を有していないものとする。
2022年 社労士試験 択一式 国民年金 問8
解答はいずれも「×」で、Dの場合だと42年間も厚生年金保険の被保険者であり、国民年金の2号被保険者にもかかわらず、老齢基礎年金は満額もらえません。
老齢基礎年金は国民年金の被保険者期間が480カ月あれば満額もらえます。
試験対策で勉強するように、厚生年金の被保険者期間は国民年金では、「20歳以上、60歳未満」の期間のみ国民年金の計算に含まれます。
また、1号被保険者は60歳以上で任意加入という制度で480カ月になるまで加入できますが、60歳以上の厚生年金保険の加入者は国民年金の任意加入はできません。
そのため、60歳以上の厚生年金保険の被保険者期間は国民年金の被保険者期間に算入されず、Dの問題では23歳~60歳までの37年分しか国民年金の老齢基礎年金はもらえないことになります。
厚生年金の加入期間によって老齢基礎年金の額が変わり不公平?
20歳から60歳まで厚生年金の被保険者であった場合には、40年間がそのまま国民年金の被保険者期間に算入されるため、480カ月の加入期間で満額の老齢基礎年金がもらえます。
それに対して、Dのように23歳~65歳までの42年間も厚生年金の被保険者であった場合には、37年(444ヶ月)分の老齢基礎年金(満額×444ヶ月/480ヶ月)しか貰えないことになります。
Dの方が厚生年金の加入期間自体は長いのに、老齢基礎年金が少ないのは不公平に見えます。
また、1号被保険者の場合は任意加入制度で60歳以上も保険料を納めれば穴埋めできますが、厚生年金の被保険者の場合60歳以上でも保険料を払うのに国民年金の計算期間には算入してもらえません。
国民年金だけを見るとものすごく60歳以上の厚生年金が損しているように見えます。
しかし、厚生年金法の「経過的加算」も併せてみると、老齢基礎年金が満額もらえなくても損はしていないことが分かります。
厚生年金法の「経過的加算」
老齢厚生年金の経過的加算により不公平はない
厚生年金保険法では昭和60年改正の附則59条の第2項で「経過的加算」が定められています。
ざっくり言うと、
「1628円×厚生年金加入月数(上限は480ヶ月、年齢の制限なし)」で計算した金額から、「厚生年金加入中の老齢基礎年金の金額(20歳以上60歳未満の月数相当)」を控除した金額を「経過的加算」として厚生年金から支給します。
ということです。(条文に興味がある方は、この記事の下の方に条文を載せておきます。)
年齢制限なしで上限480ヶ月×1,628円がざっくり老齢基礎年金の満額と概ね整合する金額です。ここから国民年金から貰える老齢基礎年金相当額を引いた分を厚生年金から貰えるということになります。
そのため、先ほど出てきたDの23歳~65歳まで厚生年金に加入していた人というのは、老齢基礎年金が少ない分、この経過的加算が多くなるということです。

20歳から60歳までの40年間厚生年金に入っていた人は老齢基礎年金が満額のため経過的加算がほとんどなく、23歳から65歳まで加入していた場合は、老齢基礎年金が少ない分経過的加算が多くなります。
「1,628円×480ヶ月分」をすべて国民年金から貰うか、国民年金でもらえない部分を厚生年金から貰うかの違いだけ、「1,628円×480ヶ月分」を貰えることに変わりはないということです。
(注)上記の説明では厚生年金の定額相当満額と老齢基礎年金の満額には若干の差がありますが、説明の都合上は割愛しています。また、物価変動による改定率についても割愛しています。

今回は、2022年社労士試験の択一式の国民年金の問題から、厚生年金の経過的加算を見てきました。科目横断的な理解があれば、この問題は迷わず解答できたのではないでしょうか。
(老齢厚生年金の額の計算の特例)
e-Gov法令検索
附則第59条2項
老齢厚生年金(厚生年金保険法附則第八条又は平成六年改正法附則第十五条第一項若しくは第三項の規定により支給する老齢厚生年金を除く。)の額は、当分の間、第一号に掲げる額が第二号に掲げる額を超えるときは、同法第四十三条第一項及び第四十四条第一項の規定にかかわらず、これらの規定に定める額に第一号に掲げる額から第二号に掲げる額を控除して得た額を加算した額とする。
一 千六百二十八円に改定率を乗じて得た額(その額に五十銭未満の端数が生じたときは、これを切り捨て、五十銭以上一円未満の端数が生じたときは、これを一円に切り上げるものとする。)に厚生年金保険の被保険者期間(附則第四十七条第一項の規定又は他の法令の規定により厚生年金保険の被保険者であつた期間とみなされた期間に係るものを含む。以下この項において同じ。)の月数(当該月数が四百八十を超えるときは、四百八十とする。)を乗じて得た額
二 国民年金法第二十七条本文に規定する老齢基礎年金の額にイに掲げる数をロに掲げる数で除して得た数を乗じて得た額
イ 厚生年金保険の被保険者期間のうち昭和三十六年四月一日以後の期間に係るもの(当該被保険者期間の計算について附則第四十七条第二項から第四項まで、平成八年改正法附則第五条第二項若しくは第三項又は平成二十四年一元化法附則第七条第二項若しくは第三項の規定の適用があつた場合にはその適用がないものとして計算した被保険者期間とし、二十歳に達した日の属する月前の期間及び六十歳に達した日の属する月以後の期間に係るものその他政令で定める期間に係るものを除く。)の月数
ロ 附則別表第八の上欄に掲げる区分に応じて同表の下欄に定める月数


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