2022年11月22日の日経新聞の朝刊に、「年金3年ぶり増額改定へ 来年度1.8%増の試算 マクロスライド発動」という記事が載っていました。
社労士試験では、国民年金法、厚生年金法での論点になりますね。
年金3年ぶり増額改定へ 来年度1.8%増の試算
記事の内容は、足元の物価上昇を踏まえ、2023年度の公的年金の支給額は3年ぶりの引き上げ改定となる見通しであるが、「マクロ経済スライド」が発動し、実質では目減りする可能性が高いというものです。
物価上昇率は2.5%程度であるが、マクロ経済スライドでのキャリーオーバー制度での過去に減額できなかった分の繰越を含め0.7%程度上昇が抑制され、年金の増額は1.8%程度となる試算となっています。
結果、物価上昇2.5%に対して年金の増加は1.8%となり実質価値としては目減りすることになります。
マクロ経済スライド
マクロ経済スライドとは
詳しくは、日本年金機構のHPなどが参考になります。
砕けた言い方をすると、少子高齢化が進んで現役世代が減ったり寿命が延びて高齢者が増えたら年金を目減りさせますよ、という制度です。
年金は、物価や賃金が上昇するとそれに合わせて増額される仕組みとなっています。マクロ経済スライドではこの増額される場合に、少子高齢化の影響を加味して、増額幅を抑える仕組みになっています。
原則は、名目手取り賃金変動率又は物価変動率で改定されますが、調整期間と呼ばれるマクロ経済スライドが発動中は、これにマクロ経済スライドのスライド調整率を差し引いてして年金が改定されます。
年金のスライド
国民年金、厚生年金ともに、賃金・物価の変動率に応じて年度ごとに改定されることになっています。
新規裁定者は、名目手取り賃金変動率で、既裁定者は物価変動率を用いて改定されます。
ただし、物価変動率>名目手取り賃金変動率のときは既裁定者も名目手取り賃金変動率で改定されます。(下図の右下の領域)
マクロ経済スライド
マクロ経済スライドは、賃金・物価による改定率がプラスの場合、当該改定率から、現役の被保険者の減少と平均余命の伸びに応じて算出した「スライド調整率」を差し引くことによって、年金の給付水準を調整します。

マクロ経済スライドのキャリーオーバー
マクロ経済スライドは、①賃金・物価の上昇率<マクロ経済スライドの調整率の場合は、年金の改定が行われません。言い換えると賃金・物価の上昇率の分だけマクロ経済スライドで調整して年金の金額が減らないようします。この場合に引き切れなかった部分はキャリーオーバーといって、次年度以降に繰り越すことになります。

例えば、物価上昇率が+0.2%で、マクロ経済スライドによる調整が0.3%の場合は、0.2%分だけマクロ経済スライドによる調整をして、結果として年金の改定は±0%(=改定しない)ことになります。
そして、マクロ経済スライドの調整のうち、調整できなかった0.1%分は翌年度以降に繰り越されることになります。
また②賃金・物価の上昇率がマイナスの場合にはマクロ経済スライドの調整はされずにすべてキャリーオーバーされることになります。

例えば、物価上昇率が、-0.2%(物価が下落)のときに、マクロ経済スライドの調整が0.3%の場合は、マクロ経済スライドは調整されず、年金は-0.2%の改定となります。
そして、マクロ経済スライドの0.3%はすべてが翌年度以降に繰り越されることになります。
キャリーオーバーされたマクロ経済スライドについては、翌年度以降で賃金・物価変動率がプラスになったときに、その年のマクロ経済スライドを引いてもまだ余裕があるときに差し引かれることになります。
今回の新聞の記事であるように、今回、物価上昇率が2.5%程度と大きくなり、過去のマクロ経済スライドの調整のキャリーオーバー分も合わせて差し引かれることとなりました。
社労士試験でのポイント
年金の物価変動率、名目手取り賃金変動率での改定、マクロ経済スライドは難しい論点なので、完全に理解している受験生はそれほど多くないと思われるので、難しければ最低限のことを押さえて、他に注力するほうがいいでしょう。
以下は最低限押さえておく必要があるでしょう。
- 改定の対象にならないもの。(国民年金の付加年金等)
- 国民年金は「改定率」、厚生年金は「再評価率」(内容は同じ)
- 新規裁定者は「名目手取り賃金変動率」
- 既裁定者は「物価変動率」ただし「物価変動率>名目手取り賃金変動率なら名目手取り賃金変動率」(言い換えると、物価変動率と名目手取り賃金変動率の小さいほう。)
- マクロ経済スライド
- 名目手取り賃金変動率・物価変動率がプラスでマクロ経済スライド調整率を引いてもプラスのとき ⇒ マクロ経済スライドを差し引き
- 名目手取り賃金変動率・物価変動率がプラスで、マクロ経済スライド調整率を引くとマイナスになるとき ⇒ 年金改定なし、マクロ経済スライドの一部がキャリーオーバー
- 名目手取り賃金変動率・物価変動率がマイナスのとき ⇒ マクロ経済スライドの調整はせずにすべてキャリーオーバー
- 改定は、4月の年金額から改定(4月分で6月に支給されるものから改定)

今回は、国民年金、厚生年金のマクロ経済スライドでした。
やっと想定通りにマクロ経済スライド分が調整できそうなので、2023年本試験ではマクロ経済スライドがでるかもしれませんね。


コメント